中折れハットとは、帽子の頭頂部の中央部分が縦長に折り込まれた形の、スタイリッシュな帽子です。欧米ではフェドーラ(Fedora)と呼ばれ、19世紀後半のヨーロッパで誕生しました。その後紳士の間で評判になり、政治家なども好んでこの帽子を愛用していた姿が記録されています。男性のみならず、女性にも似合うデザインなのでパンツスーツに合わせてクールな装いを演出したり、サマードレスに合わせて爽やかな雰囲気を楽しんだりと、カジュアルにもフォーマルにも合わせやすく、高いファッション性があることで男女を問わずに愛用されてきています。欧米の政治家や王族を始め、ハリウッドスターや有名歌手などに愛用され続け、現在では帽子の定番として世界中で定着した、中折れハットの歴史を探ってみましょう。

女性達のファッションアイテムとして始まった流行

中折れハットが欧米はフェドーラと呼ばれ始めたのは、1891年のことでした。欧米でフェドーラ帽と呼ばれるようになった由来は、1889年にアメリカで初演された同名の舞台がきっかけです。フェドーラという題名の物語は、1882年にフランスの劇作家により書かれたものでした。この物語のヒロインは悪名高き男装の麗人。舞台で彼女が被っていたのがこの形の帽子であり、女性の間で一気に人気が爆発しました。お洒落に敏感な女性達の間で流行したフェドーラ帽は、当時勃発した女性の権利運動のシンボルになる程、注目を浴びたアイテムでした。1924年に入ると、英国国王がこの帽子を被っていたことから男性達の間で人気に火が付きます。スタイリッシュで紳士的なファッション性と、雨風から頭部を守る機能性を持ち合わせていることもあり、流行は一気に広がりました。20世紀に入ると、正統派のユダヤ教徒達が普段着の帽子として黒いフェドーラを着用するようになります。

セレブ達のファッションアイコンとして注目される

アメリカでは1920年から50年頃にかけて、ギャングスターや禁酒時代を代表するファッションのひとつとして重要視されています。ハリウッド映画のヒーロー達がフェドーラ帽を被っていたり、有名な歌手やフットボール選手、ハリウッドスターなどが愛用することで、この帽子が彼等のトレードマークなり、ファッションアイコンともなりました。中折れハットがイギリスやアメリカから日本に輸入され始めたのは、幕末から明治時代の頃です。輸入だけに頼らず、国内でも帽子が作られ始めます。有名なものとして、1857年に創業したイタリアの老舗ボルサリーノ社のものがあります。フェルトを使用した柔らかい質感の帽子は、今でも古い機械を使いながら職人達によって手作りされており、その被り心地の良さと品質が定評を得ています。当時75万個もの帽子を販売した記録があります。